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「パソコンの価格競争は、そろそろ一段落さ」



violin



「ワトスン、もう少し待つことにしたのかい?」
 2月のある夜、遅めの夕食を終えて暖炉の前でパソコンのチラシを見ながらくつろいでいると、ホームズが突然言った。
「ああ。また値段が下がりそうだからね」
「確かに、90年のD0S/V発表以来、様相は一変したよ。92年以降に各社が低価格D0S/V機を登場させると、それに追従するようにMacintoshや98の定価も急激に下がったからね。昨年の後半には10万円台の機種さえ発売されるようになったほどだ。すさまじい勢いだよ。しかし、ハードディスク装置などのパソコンの構成部品の値段を考えると、もはやCPUの価格が大幅に下がらない限り、パソコン本体の低価格化は一段落したと考えていいんじゃないかな」
「でも、パソコン本体の値段は下がらなくても、周辺装置やソフトウエアの値段はもっと下がるだろうから、全体の価格はもっと下がるだろう」
「ああ。低価格化したパソコンに比べて、周辺装置やソフトウェアはまだまだ割高感があるから、各社とも価格キャンペーンなどで、実質的な大幅値下げに動き出しているからね」
「ソフトの値段が下がれば、それに連れてハードの値段ももう少し下がるんじゃないかと思ってね」
「君はあいかわらずだね」ホームズは、議論をしたくなったときによく使う桜のパイプに火を付けながら言った。「確かにもっと安価なマシンが登場するかもしれないが、売れ筋商品にはならないはずだ。パーソナル・ワープロの歴史を辿れば、一目瞭然さ。何年も前の話たが、ワープロ専用機が電卓並みの低価格競争を演じたことを君も覚えているだろう。僕の記憶に間違いなければ、当時としては破格の定価5万円前後までいったはずだ」
「ああ。僕もl台買った覚えがあるよ」
「ところが、いまはどうだい? ワープロ専用機はいまだに健在だが、低価格機は姿を潜め、売れているのはパソコン機能を取り入れた高級機ばかりだ。低価格機は、ワープロ普及には役立ったが、その役目を終えるとともに市場から消えていったのさ」
「低価格パソコンもやがては消え去るというのかい?」
「いや、姿を変えていくと思っているんだ。ワープロ専用機が、パソコン機能を取り入れてパソコンの購入に迷っていたユーザーを獲得していったようにね。パソコンがいまのままで変わらずに、用途もワープロや表計算に限られるとなると、値段が安くなったからといっても爆発的には売れないだろう」
「そうだろうね」
「いずれにせよ、少なくともそのチラシの店で購入しないのは賢明だよ」
「でも、ずいぶん値引きしてあるぜ」
「ああ。現金で買うならどこよりも安いだろう。でも、君はローンを組むんだろう。その店の金利は高いから5年ローンを組んだら他の店と同じか高いくらいだよ。表面的な事実に惑わされないことだね」
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